登録離婚と判決離婚のどちらを選ぶか
登録離婚の条件は「争点がひとつもないこと」です。離婚そのもの、子の親権、財産の分与、養育費のいずれについても合意があり、双方が同日に窓口へ出頭できることが前提になります。役場は合意内容の公平さを審査しないため、条項が曖昧なまま登録されると、後の履行段階で必ず問題になります。当事務所では、子の居所、面会の頻度、教育費・医療費の負担割合、名義変更の期限までを協議書に落とし込み、登録当日に一括して提出します。
判決離婚は法定の離婚原因に該当する必要があり、裁判所が求めるのは主張ではなく証拠です。通信記録、送金履歴、居住実態の資料、証人をあらかじめ確保してから提訴したほうが、結論も期間も安定します。相手方が国外にいる場合は送達手続だけで数か月を要することがあり、管轄と送達の見通しを最初に立てておく必要があります。
夫婦財産・婚前契約・養育費
タイ法は個人財産(シン・スアン・トゥア)と婚姻中の共有財産(シン・ソムロット)を区別します。婚姻前から所有していた財産、婚姻中の贈与や相続で得た財産は個人財産、婚姻中に得た収入や資産は共有財産と推定され、離婚時は原則として等分です。実際の争いは混同した場合に起きます。共有の収入で婚前購入した物件のローンを返済した、個人資金で共有住宅を増築した——こうした場合に有効な証明は資金の流れの記録だけです。
婚前契約はタイでも有効ですが、形式要件が厳格で、婚姻登録と同時に提出され登録簿に記載されている必要があります。婚姻後に作成した契約や、国外で署名しただけでタイで登録していない契約は効力を争われます。養育費は協議で消滅させることはできず、事情に応じて変更可能で、不払いの場合は執行手続で給与や資産の差押えを求めることになります。
親権・面会・子の国外移動
婚姻していない父母の場合、親権は原則として母に単独で帰属します。父が法的な親子関係を得るには、認知登録または裁判所の裁定が必要です。この一手を欠くと、旅券申請、就学手続、医療同意、出国許可のすべてで父の法的地位が弱くなります。
タイはハーグ子奪取条約の締約国です。相手方の同意や裁判所の許可なく子を国外に長期間移動させると、不法な連れ去りと評価され返還手続の対象になり得ます。逆方向の事案も同様です。離婚文書の中に出国許可の条項を明記し、必要な場合は裁判所の命令を得ておくのが安全な処理です。
タイ国内資産の相続:まず遺産管理人の選任
タイに土地、コンドミニアム、銀行預金、会社持分を持つ方が亡くなった場合、相続人は親族関係を示すだけでは名義変更ができません。まず裁判所に遺産管理人(Estate Administrator)の選任を申し立て、その命令に基づいて管理人が土地局、銀行、商業開発局へ移転手続を行います。この段階を踏まないと、土地局は申請自体を受け付けません。
裁判所に提出する資料は、死亡証明、相続関係を示す書類、遺産目録、他の相続人への通知または同意の記録などです。国外で作成した書類は公証と領事認証を経て、認められたタイ語訳を添付します。タイで有効な遺言があれば手続は明確に短縮され、遺言がない場合は法定相続順位が分配を決めます。
よくある質問
Q:日本で成立した離婚は、タイでもそのまま有効ですか。
A:自動的に登録上の効果が生じるわけではありません。再婚登録、土地の名義変更、姓の変更など、次に行う手続の種類に応じて、認証と翻訳を備えた判決書等の提出や承認手続が必要になります。
Q:配偶者がタイ人です。離婚後の在留資格はどうなりますか。
A:婚姻を理由とするビザの基礎は離婚の成立で失われるため、合法的な滞在期間内に別の種別へ変更するか出国する必要があります。想像より短い時間軸になりがちで、離婚書類の署名前に計画しておくべき点です。
Q:外国人はタイの土地を相続できますか。
A:相続はできますが、取得後の保有には法律上の制約があり、実務では法定の期間内に処分を求められることがあります。コンドミニアムや預金は土地と扱いが異なるため、資産ごとの評価が必要です。